pot roses 4'16"

Aug. 2013 ART SPACE NIJI(KYOTO)


 『pot roses 4'16"』は、植物(ミニバラ)の形態を記号化し、生長のプロセスをトレースして音楽にした作品。自然の造形は人間に様々なインスピレーションを与えてくれる。2012年の作品『lily pads』では植物のかたちの特性から音楽を作った。この作品では8日間という時間の区切りの中で起こった植物の変化について観察していく。

 植物と音楽にはどんな関係性を見つけることができるだろうか?例えば、バラの鉢植えを真上から見下ろすと、葉が様々な方向に伸びていて重なりが少ないことに気づく。健康なバラの葉は3枚葉、5枚葉、7枚葉で一枚になっていて、光合成が効率的にできるよう合理的に配置されている。そのバランスはとても音楽的だ。鉢植えのバラを上から撮影して画像処理し、葉の位置関係をそのまま音符にして五線譜に置いて、8小節のフレーズにした。

 バラを決まった角度から毎日撮影すると、日々の変化を記録することができる。葉の密度が高くなり過ぎると、光合成や水分の蒸散などの働きが停滞して病気にかかりやすくなる。弱った葉が枯れて花茎から落ち、一方で新しい葉が別の場所から伸びてきてエラーが修正される。人の手で剪定することもある。多くの要因に影響を受けながら植物は生長・エラー・修正をループして、絶えず変化を起こしている。このようなせめぎ合いと調和もまた音楽的ではないか。この作品に写し取った一日あたり8小節×8日間、全体で64小節のフレーズは、その植物固有の周期性の一端を表している。(2013年9月 制作ノートより)

 

 この作品では新しく植物の生長をテーマとして取り上げた。それによって、作品性にも音楽性にも新しい展開を加えることができたと考えている。植物は必ずしも作家の意図に沿って動いてくれないが、その生長(変化)の観察を続けるうちに、音楽と生命活動との共通点の「均衡」に関心を持つようになった。例えば、植物の生長・エラー・修正のループからは音楽の対位法やポリフォニー、葉の位置の均斉からは調和のとれた和音を連想することができた。


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